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認定医療法人制度は令和11年末まで延長|今から準備すべき理由


【認定医療法人・持分なし移行 承継シリーズ(全3回)】

第1回(本記事):制度と期限|なぜ今から準備すべきか

第2回:移行のメリットとデメリット

第3回:移行手続きの進め方と費用

「認定医療法人制度の期限は令和8年末まで」――そう聞いて焦っていた理事長も多いかもしれません。

しかし認定医療法人制度で認定を受ける期限は、令和8年度税制改正で令和11年12月末まで3年延長されています。

ただし「延長された=急がなくてよい」ではありません。

持分あり医療法人の出資持分は相続税の重い負担につながるため、承継を控えた親子ほど今から準備を始める意味があります。

この記事でわかること

  • 認定医療法人制度とは何か、なぜ持分あり医療法人に相続税リスクがあるのか
  • 認定を受ける期限が令和11年12月末に延長された事実と、その正確な根拠
  • 「延長されたのに今から準備」といえる理由と、シリーズ全体で扱う論点

認定医療法人制度とは|持分あり医療法人の相続税リスクと制度の狙い

認定医療法人制度は、「持分あり医療法人」が「持分の定めのない医療法人(持分なし医療法人)」へ移行する際に、税負担を猶予・免除する国の制度です。

厚生労働大臣の認定を受けた医療法人が対象で、地域医療を担う医療法人の経営を、相続の壁で途切れさせないことを狙いとしています。

持分あり医療法人が抱える相続税・払戻請求のリスク

平成19年3月までに設立された医療法人の多くは、出資者が「出資持分」を持つ「持分あり医療法人(経過措置型医療法人)」です。

この出資持分は、株式と同じように財産的価値を持ち、相続が起きると相続財産として相続税の課税対象になります。

問題は、法人の利益が内部留保として積み上がると、出資持分の評価額が当初の出資額をはるかに超えて高騰することです。

設立時に1,000万円だった出資が、数億円と評価されるケースも珍しくありません。

承継期の親子にとっては、「後継者が持分を相続した瞬間に多額の相続税が発生する」「他の出資者から払戻しを請求されると法人の資金繰りが揺らぐ」という二つのリスクが同時にのしかかります。

制度の全体像(納税猶予 → 移行完了で免除)

認定医療法人制度は、この負担を段階的に軽くする仕組みです。認定を受けたうえで移行を進めると、相続税・贈与税の納税がいったん猶予され、最終的に持分を放棄して移行が完了すれば、猶予された税額が免除されます。

持分そのものをなくすことで、将来の相続税リスクを根本から解消することが制度の目的です。

具体的な税制優遇の中身と、その裏にある注意点は、本シリーズ第2回で詳しく解説します。

認定を受ける期限は令和11年12月末へ3年延長された(令和8年度改正)

かつて認定医療法人制度で認定を受ける期限は令和8年(2026年)12月末とされていました。

しかしこの期限は、令和8年度税制改正および関連する医療法改正によって、令和11年(2029年)12月31日までに延長されています。

ここで注意したいのは、令和11年12月末は「申請の締切」ではなく「移行計画の認定を受ける期限」だという点です。

租税特別措置法70条の7の9などの条文は、対象を「令和十一年十二月三十一日までの間に厚生労働大臣認定を受けた医療法人に限る」と規定しています(2026年7月時点の条文)。

厚生労働省の「持分の定めのない医療法人への移行計画の認定申請について」でも、この期日までに移行計画の認定を受ける必要があると案内されています。

申請から認定までには審査期間があるため、申請自体はこの期限より十分前に行う必要があります。

※ 制度の期限・要件は令和8年度税制改正時点の情報です。改正により変わる可能性があるため、最新の告示・厚生労働省の案内をご確認ください。

なぜ「延長されたのに今から準備」なのか

期限が3年延びたことで、「まだ余裕がある」と感じるかもしれません。

しかし移行は、申請書を出せばすぐ完了するものではありません。

自法人が制度の対象か確認し、出資持分の評価を行い、親族間で方針を合意し、認定を申請し、認定後も移行手続きを進める――ここまでに年単位の時間がかかります。

 

図のとおり、認定申請だけでなく「移行完了」にも期限が設けられています。

理事長の年齢や健康、後継者の準備状況を踏まえると、期限までの3年強は決して長くありません。

だからこそ、承継を意識し始めた段階での早めの検討が現実的な選択になります。手続きの進め方と費用感は、本シリーズ第3回で具体的に取り上げます。

モデルケースで見る|相続税リスクの大きさ

モデルケース:A医院・理事長Aさん(65歳)と後継者の長男Bさん(医師・38歳)

※ 以下は制度の理解を助けるためのモデルケースであり、実在の法人・数値ではありません。実際の評価額・税額は個別の状況により大きく異なります。

Aさんの医療法人は持分あり医療法人で、設立時の出資は1,000万円でした。

その後の内部留保の蓄積により、現在の出資持分の評価額は約1.8億円と試算されています。出資者はAさん一人、後継者は長男のBさんです。

このままAさんに相続が起きると、Bさんは評価額約1.8億円の出資持分を相続財産として引き継ぎ、他の相続財産と合算して相続税が計算されます。

持分だけで課税価格が1.8億円押し上げられるため、相続税の負担は重くなり、納税資金の確保が課題になります。認定医療法人制度を使って移行すれば、この出資持分にかかる相続税リスクを解消できる可能性があります。

その具体的な効果と引き換えに生じる義務は、第2回で詳しく見ていきます。

数字は法人ごとに変わりますが、「評価額が高いほど、移行によって解消できる相続税リスクも大きくなる」という関係は共通します。

まずは自法人の出資持分がいくらと評価されるかを把握することが、判断の出発点です。

よくある質問

Q1. 期限が令和11年末まで延びたなら、今すぐ動かなくても大丈夫ですか?

A. 令和11年12月末は移行計画の認定を受ける期限であり、申請の締切ではありません。

申請から認定までには審査期間があり、さらに出資持分の評価・家族間の合意・移行完了までには年単位の時間がかかります。

理事長の年齢や後継者の準備状況によっては、期限までの3年強は余裕があるとは言えません。

早めに現状を把握しておくことをおすすめします。

Q2. うちの医療法人が「持分あり」かどうかは、どこで分かりますか?

A. 平成19年4月以降に設立された医療法人は原則として持分なしですが、それ以前に設立され、定款に出資持分の定めがある場合は「持分あり医療法人(経過措置型医療法人)」に該当します。

定款や設立時の書類、顧問税理士への確認で判断できます。

まとめ

  • 認定医療法人制度は、持分あり医療法人が持分なし医療法人へ移行する際の税負担を猶予・免除する制度
  • 認定を受ける期限は令和8年度税制改正で令和8年末から令和11年12月末へ3年延長されている(申請の締切ではなく認定取得の期限)
  • 持分あり医療法人の出資持分は相続税の重い負担につながり、移行完了までは年単位を要するため、「延長されたが今から準備すべき」といえる
  • 次回以降、移行のメリット・デメリット(第2回)と、具体的な進め方・費用(第3回)を解説する

次のアクション:まずは自法人が持分あり医療法人か、出資持分がいくらと評価されるかを把握してください。

そのうえで、移行を検討するかどうかを家族・後継者と話し合い、医業に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

個別のご相談は 税理士法人昴へのお問い合わせ まで。


この記事の監修

税理士法人昴 所長・税理士 山根和彦

医業に特化した税務・経営支援。医療法人の設立・節税・事業承継・相続対策を多数支援。

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参考文献・一次情報源

※ 本記事の内容は2026年7月時点の法令・通達に基づいています。制度の要件・期限は改正により変わる可能性があり、個別の状況により取扱いが異なります。詳しくは税理士にご相談ください。