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持分なし医療法人への移行手続き|進め方と費用の目安を解説


【認定医療法人・持分なし移行 承継シリーズ(全3回)】

第1回:制度と期限|なぜ今から準備すべきか

第2回:移行のメリットとデメリット

第3回(本記事):移行手続きの進め方と費用

「移行した方がよさそうだが、実際に何から手をつければいいのか分からない」――そんな段階の理事長・後継者に向けて、本記事では持分なし医療法人への移行手続きを、検討から完了までの流れに沿って具体的に解説します。

認定を受ける期限(令和11年12月末)から逆算した準備の進め方、費用と期間の目安、後継者要件までを整理します。

この記事でわかること

  • 持分なし医療法人への移行手続きの全体像(検討から完了までの5ステップ)
  • 各ステップで何をするか、どこで専門家の関与が必要になるか
  • 費用と期間の目安、後継者要件など医業ならではの実務上の留意点

移行手続きの全体像|検討から完了までの5ステップ

持分なし医療法人への移行は、次の5つのステップを順に進めます。

認定取得だけでなく「移行完了」にも期限があるため、逆算した準備が欠かせません。

ステップ 内容 主な関与
① 検討・情報収集 自法人が制度の対象か確認し、移行の方向性を検討 理事長・後継者・顧問税理士
② 出資持分の評価・合意 出資持分の評価額を把握し、家族・関係者で方針を合意 税理士
③ 移行計画の作成・認定申請 移行計画を作成し、厚生労働大臣の認定を申請(審査期間を見込み早めに) 税理士・専門家・厚生局
④ 認定 厚生労働大臣の認定を受ける(令和11年12月末までに認定取得) 厚生労働省
⑤ 移行完了 持分の放棄などを行い、移行計画に定めた移行期限までに完了 法人・専門家

 

 

ステップ別の進め方

①自法人が対象か確認する

まず、自法人が「持分あり医療法人(経過措置型医療法人)」に該当するかを確認します。

平成19年3月までに設立され、定款に出資持分の定めがある医療法人が対象です。

定款や設立時の書類、顧問税理士への確認で判断できます。ここで対象外であれば、そもそも移行の検討は不要です。

②出資持分を評価し、家族で方針を合意する

移行の判断は、出資持分がいくらと評価されるかを把握するところから始まります。

評価額が大きいほど、移行で解消できる相続税リスクも大きくなります。

評価には専門的な計算が必要になるため、税理士に依頼するのが一般的です。

あわせて、持分を手放すことについて家族・後継者・他の出資者と方針を合意しておくことが、後のトラブルを防ぎます。

③移行計画を作成し、認定を申請する

方針が固まったら、移行計画を作成し、厚生労働大臣の認定を申請します。

ここで重要なのは、令和11年(2029年)12月末は「申請の締切」ではなく「移行計画の認定を受ける期限」だという点です。

申請から認定までには審査期間があるため、申請自体はこの期限より十分前に行う必要があります。

移行計画には、移行の期限や方法などを定めます。

申請書類の作成には専門的な確認が必要になるため、医業に詳しい専門家の関与が現実的です。

※ 認定を受ける期限・要件は令和8年度税制改正時点の情報です。改正により変わる可能性があるため、最新の厚生労働省の案内をご確認ください。

④認定後、持分を放棄し移行を完了する

認定を受けた後は、移行計画に沿って持分の放棄などの手続きを進め、移行計画に定めた移行期限までに移行を完了します。

認定から移行完了までにも期限が設けられているため、認定後もスケジュール管理が必要です。

移行完了後も、6年間の運営要件を満たし続ける義務がある点は、本シリーズ第2回で解説したとおりです。

費用と期間の目安

移行にかかる費用と期間は、法人の規模、出資者の人数、出資持分の評価の複雑さによって大きく異なります。

一般的には、出資持分の評価、移行計画の作成、認定申請書類の準備、認定後の手続きといった各段階で専門家の関与が必要になり、それぞれに報酬が発生します。

期間についても、検討開始から移行完了までには年単位の時間がかかるのが通常です。

「令和11年末までに申請すれば間に合う」と考えると、審査期間や、評価・家族間の合意に想定以上の時間がかかり、認定取得が間に合わなくなる恐れがあります。

早めに全体像と概算費用を専門家に確認しておくことをおすすめします。具体的な金額は個別見積もりによります。

後継者要件・分院など医業ならではの留意点

医療法人の移行には、一般の会社にはない実務上の留意点があります。

後継者が医師として法人を継げる状態にあるか、理事長要件を満たせるかは、移行の前提になります。

後継者が医師でない場合や、まだ経験が浅い場合は、承継計画そのものの見直しが必要になることもあります。

また、分院を展開している法人では、移行後6年間の運営要件を各拠点で維持できるかを、あらかじめ確認しておく必要があります。

手続きの負担が本業である診療やクリニック経営を圧迫しないよう、スケジュールに余裕を持たせることも大切です。

なお、持分の評価を退職金の支給などで引き下げてから承継する方法との比較検討も有効です。

どちらが自法人に合うかは、「持分なし医療法人への移行と退職金対策|どちらを選ぶか判断軸」(公開後に内部リンク)もあわせてご検討ください。

モデルケース|親子で進めるロードマップ

モデルケース:A医院・理事長Aさん(65歳)と後継者の長男Bさん(医師・38歳)

※ 以下は制度の理解を助けるためのモデルケースであり、実在の法人・数値ではありません。実際のスケジュール・費用は個別の状況により大きく異なります。

Aさんの医療法人(持分あり)の出資持分は約1.8億円と試算されています。

移行を決めたAさんとBさんは、まず顧問税理士に出資持分の評価を依頼し、家族で方針を合意しました(ステップ①②)。

次に移行計画を作成して認定を申請し(ステップ③)、認定後に移行手続きを進めます(ステップ④⑤)。

Aさんは理事長を続けながら、Bさんの理事長就任の準備も並行して進めています。

このように、移行手続きは税務・法務・経営の準備を並行して進める必要があります。

認定取得の期限である令和11年12月末から逆算し、審査期間も見込んだ余裕のあるスケジュールで着手することが、無理のない承継につながります。

よくある質問

Q1. 移行手続きは自分たちだけで進められますか?

A. 制度上、必ず専門家に依頼しなければならないわけではありませんが、出資持分の評価や移行計画・認定申請書類の作成には専門的な確認が必要です。

医業に詳しい税理士などの関与が現実的で、結果として手続きの確実性も高まります。

Q2. 申請してから認定を受けるまで、どれくらいかかりますか?

A. 審査には一定の期間がかかり、法人の状況や申請時期によって異なります。

令和11年12月末は移行計画の認定を受ける期限であり、その日までに認定を得ておく必要があります。

認定後の移行完了にも期限があるため、期限ぎりぎりの申請ではなく、審査期間を見込んで余裕を持って申請することをおすすめします。

Q3. 途中で移行をやめることはできますか?

A. 認定前の検討段階であれば方針を見直すことは可能ですが、持分を放棄した後は不可逆です。

放棄の前段階で、メリットとデメリット(第2回参照)を十分に比較し、家族・後継者と合意しておくことが重要です。

まとめ

  • 持分なし医療法人への移行手続きは、①対象確認②持分評価・合意③移行計画作成・認定申請④認定⑤移行完了の5ステップで進む
  • 令和11年12月末は移行計画の認定を受ける期限(申請の締切ではない)で、認定後の移行完了にもさらに期限があり、検討から完了まで年単位を要する
  • 費用・期間は法人の規模や評価の複雑さで異なるため、早めに全体像と概算を専門家に確認しておくとよい
  • 後継者の医師・理事長要件や分院の運営要件など、医業ならではの留意点を早期に整理することが、無理のない承継につながる

次のアクション:まずは顧問税理士に出資持分の評価と移行手続きの全体像・概算費用を相談し、認定取得の期限(令和11年12月末)から逆算し、審査期間も見込んだスケジュールを一緒に描いてください。

後継者の要件や家族間の合意も、早めに着手するほど選択肢が広がります。

個別のご相談は 税理士法人昴へのお問い合わせ まで。


この記事の監修

税理士法人昴 所長・税理士 山根和彦

医業に特化した税務・経営支援。医療法人の設立・節税・事業承継・相続対策を多数支援。

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参考文献・一次情報源

※ 本記事の内容は2026年7月時点の法令・通達に基づいています。制度の要件・期限は改正により変わる可能性があり、個別の状況により取扱いが異なります。詳しくは税理士にご相談ください。