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2026.03.02
相続対策は“いつから”始めるべきか? 手遅れになる人・間に合う人の分かれ目
相続対策は“いつから”始めるべきか?
手遅れになる人・間に合う人の分かれ目
「その“まだ大丈夫”が一番危ない」
開業医の先生と相続の話をすると、だいたい最初に出てくる言葉があります。
- 「忙しくて、そこまで手が回らない」
- 「まだ元気だから大丈夫」
- 「うちは家族仲いいし、揉めないと思う」
気持ちはよく分かります。診療、スタッフ、資金繰り、設備投資、行政対応…相続より優先順位が高いことが山ほどある。
ただ、相続対策は「体調の問題」ではなく、時間と準備の問題です。
現場で本当に怖いのは、先生が倒れること自体よりも、倒れた瞬間に“何も決まっていない”状態が露呈することです。
ここで言い切ります。
「まだ大丈夫」は、だいたい“相続が難しくなる準備”を進めているだけです。
相続対策を直前に考える人の共通点
直前になって慌てるケースには、共通パターンがあります。先生方に多いのは、次の3つです。
1) 相続=相続税の話だと思っている
相続は税金だけの話ではありません。
「誰が」「何を」「どう引き継ぐか」が先です。税金はその結果として付いてくる。
でも直前型の方は、「税金を安くする方法ありませんか?」から入ります。
順番が逆です。
2) 自分の資産全体を数字で把握していない
これも多いです。
預金は把握していても、土地建物は「だいたいこのくらい」、医療法人は「たぶんそんなに…」という感じ。
そして実際に一覧にすると、
- 医療法人の内部留保が厚い
- 役員借入金が大きい
- 不動産が“相続税評価”で想像以上に高い
- 借入はあるのに担保余力が足りない
など、見たくない現実が見える。
3) 不動産や法人を“感覚”で管理している
例えば地主医師の先生は、
- 誰の名義の不動産か曖昧
- 賃貸の契約関係がぐちゃぐちゃ(親の口約束のまま)
- 法人と個人の財布が混ざりがち
- 地代家賃の流れが説明できない
こういう状態で相続を迎えると、「税金」以前に分けられません。分けられないものは揉めます。これは綺麗事ではなく、現場の現実です。
なぜ直前対策は危険なのか
直前対策が危険な理由は、はっきり3つあります。
1) 使える選択肢が一気に減る
不動産の組み替え、法人の整理、承継スキームの検討、後継者教育…。
これ、数か月で片付く仕事じゃありません。
直前になると、残るのは「小手先の対策」だけです。
小手先は、だいたい効きません。もしくは副作用が出ます。
2) 税務署から否認されやすい対策しか残らない
直前に増えるのが、
- “急いで贈与した”
- “急いで名義を変えた”
- “急いで法人に動かした”
- “急いで評価を下げた”
こういう動きです。
そして税務署も、こういう動きが大好物です(残念ながら)。
結局、対策したつもりが、税務調査リスクを上げるだけになりがちです。
3) 家族間の意思確認が間に合わない
ここが一番痛い。
相続対策は「家族会議」が必要です。でも直前は、先生が動けない、時間がない、家族の温度差が大きい。
そして何も決めないまま相続が起きると、
- クリニックは誰が継ぐ?
- 不動産の管理は誰?
- 長男は継ぐ気がある?ない?
- 配偶者の生活費はどう守る?
この議題が、葬儀直後に発生します。地獄です。現場では普通に起きています。
さらに最近の税制改正の流れとして、直前対策を牽制する方向に寄っています。
詳しい話は別記事に回しますが、「後からやればいい」が通りにくくなっている、という肌感は持っておいた方がいいです。
5年・10年単位で考えると何が変わるのか
相続対策で本当に価値があるのは、「節税」よりも選択肢です。
不動産の組み替えができる
5〜10年あると、
- 売って整理する
- 貸し方を変える
- 法人に持たせる/個人に戻す
- 借入を使って資産構成を変える
など、現実的に動けます。
逆に直前は「動けない不動産」が残ります。動けない資産は、揉めやすい資産です。
法人・個人資産の整理ができる
医療法人がある先生は特に、時間が効きます。
- 役員借入金の整理
- 退職金の設計
- 株式評価と承継の方針決定
- 内部留保の出口戦略
これらは“設計”が必要で、設計には時間が必要です。
贈与や承継の選択肢が増える
「時間=節税」ではない。
時間=選択肢の多さです。
贈与も、慌てて一括で動かすほど危ない。
余裕があると、家族の状況を見ながら、安全に・筋のいい形で進められます。
手遅れになる人・間に合う人の分かれ目
ここは税理士として、遠慮せずに言います。
手遅れになる人の特徴
- 「相続は税金の話」と思っている
- 資産の全体像を見ない(見たくない)
- 不動産・法人が“なんとなく”で回っている
- 「うちは揉めない」と根拠なく信じる
- 体調や忙しさを理由に、先送りを正当化する
このタイプは、相続が起きた瞬間に、家族が詰みます。
先生が悪いのではなく、先送りという選択が悪い。
間に合う人の特徴
- まず全体像を数字で出す(怖くても見る)
- 「誰が継ぐか」「誰に何を残すか」から考える
- 不動産・法人の“整理の順番”をつける
- 家族と意思確認を早めに始める(完璧じゃなくていい)
- 5年・10年で段階的に進めると腹を括る
相続対策は、100点を作る作業ではありません。
60点の設計図を、早く作る作業です。
設計図さえあれば、毎年アップデートできます。設計図がないと、当日いきなり建築が始まります(しかも施主不在で)。
まとめ
- 相続対策は早いほど有利
- 医師の相続は、法人+不動産+事業承継で資産構成が複雑になりやすい
- 後回しにすると、難易度が一気に上がる(そして家族に負担が降る)
- 「まだ大丈夫」と思った“今”が、一番早いタイミング